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#11 わくわく生きる! by マダムゆず


プロフィール

氏名 神谷 禎恵(Yoshie Kamiya)
職業 生活工房とうがらし 代表
大分県宇佐市出身。
地元宇佐育ちで、大分大学→日本女子大学→中村学園大学大学院卒業。
現在は福岡に住い、地元宇佐にある「生活工房 とうがらし」を中心に、食のコーディネーターと、調味料マイスターとして活動。
その活動領域の広さは、大分にとどまる事なく九州を始めとあちらこちらで、人と人を繋ぎ、講演、セミナー、催事等、各地で飛躍的に活躍されている。

神谷さん、はじめまして!素晴らしい建物でテンションが上りますし、炊きたてのお米のいい香りがしますね!

ありがとうございます。この建物自身、台所をテーマとした建物になっているんです。
お米の匂いは、本日インタビューして頂けるという事で、せっかくなので、世界農業遺産のテーマにもなっている、『みとりおこわ』を食べて頂こうと思って、炊いているところです。

ありがとうございます!「hassh.in」の取材で、御飯が出てきたのは初めてです!では早速作りながらですが、神谷さんの「hassh.in」を教えてもらえますか?

私は、『食のコーディネーター』として活動しています。
私が『食のコーディーネーター』と思って名乗っていた訳ではなくて、新聞社の方に、私の仕事をご説明して「一番しっくり来るのではないか?」と付けていただいた肩書なんです。
『食』を切り口に、人と人を繋いだり、人と産物を繋いだり、産物と産物を繋ぐという事で、『食』が真ん中にあって、色んな物を繋いでいく役割を、私が担えたらと思っています。

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そして実は『調味料マイスター』という一面もあるんです。
『調味料マイスター』には気が付いていたらなっていた。という感じなのですが、宇佐市の院内町の柚子を、市・県・JAの方に、「院内が柚子の産地であることを広める活動をしてほしい」と言われて、始めたのがキッカケなんです。

−−『調味料マイスター』への一歩。

『調味料マイスター』というのは『日本野菜ソムリエ協会』の資格なんですけど、『野菜ソムリエ協会』の理事長の福井 栄治さんとたまたま出会ったのがはじまりだったんです。

2009年6月に新宿の伊勢丹で宇佐市がブースを出して柚子のPR活動をしていました。
柚子自体は冬なんですが、私達がお勧めしたい『柚子胡椒』や『柚子胡椒キット』は、9月の限定商品なんですよね。なので6月にパンフレットだけでPR活動をしていました。

そのPRをしている時に、通りかかった『野菜ソムリエ協会』の理事長とお話する機会があって商品の説明をしていたら、「是非、野菜ソムリエ協会で、柚子胡椒キットを取扱いたい。」という話になり、別の日程で東京へ打ち合わせに行く事になったんです。
すると、その日程がたまたま『調味料ジュニアマイスター』の講座の日程と重なっていて、なりゆきで「受けたらいい。」と皆さんから言われて、「それだったら受けてみようかな?」くらいの気持ちで、受けたんです。
『調味料ジュニアマイスター』の講座を受けてみたら、想像以上に面白くて、よく考えたら私達って、小学校や中学校のなどで家庭科の勉強をしますけど、『調味料』について勉強した事はなかったと感じました。
『大さじ・小さじ』『さしすせそ』くらいはありましたが、なんで『さしすせそ』なのかとか、砂糖はどういう行程で出来るのか?など、考えてみるとそこまで深く知らないんです。
受けた当時、『調味料ジュニアマイスター』は約200人程、『調味料マイスター』は20人程しかいなかったんです。現在は41人いるんですが、私が九州で初の資格者なんです。
なかなかめずらしい資格なんですが、とても面白いんです。

『食のコーディネーター』としての活動が『産物と産物』『産地と人』などを繋いでいく内に、『調味料マイスター』に行き着いて、『調味料マイスター』としても活動していく中で、『農林水産省 食のオフィシェ』という、料理人の方と生産者の方を繋ぐというサポートクラブで活動するまでになりました。
何かと何かを繋ぐ所の役割が私にはあると感じてます。

なるほど。食を通じて、様々な分野の方々を繋いで、もっと良い物を作っているんですね。

私のスタンスは、人や物事を繋ぐ役割なんですが、立場的に組織に所属している訳ではないので、好きな仕事しかしないんです。ワクワクする事しかしてないですね。
極端に言うと『イケメン』としか仕事してないです。(笑)

僕達って、大丈夫でしょうか?(笑)

そうじゃないんですよ。(笑)私がいう『イケメン』は顔じゃなくて、中身というか、女性も含めた『イケてる人間』なんですよ。
女性と仕事する機会も増えているのですが、ワクワクする話って男性の方が圧倒的に多いんですよ。
恋愛と一緒で、お互いが何に興味が有るのか探り合いからスタートするので、自分達の信念と信念がぶつかり合うんですよね。そういう方としか仕事してないですね。
なのでいつも楽しいですし、周りからも楽しく見えると思います。

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いつも福岡から宇佐まで通われてるんですか?

毎日ではないですが、去年のオンシーズンは1週間に5回は通った時もありました。
でも片道150キロくらいあるので、週に5回はさすがに疲弊します。でも、週に1回とかになってしまうと、「最近行ってないなぁ・・。」となってしまいますね。
大体月に8回〜10回は、宇佐を中心に大分市内や日田や豊後高田などを行ったり来たりしてます。
結構、多方面に行ったりしてるんですが、家事もこなしてるんですよ。

お家の家事もやりながら大変じゃないですか?

高校3年生と高校1年生と中学1年生の子供がいて、今日もそうなんですが、朝にお弁当を作って、学校に送って行って、ここに来てます。
終わった後は、とんで帰って、手を抜いた(笑)夕飯を作って、学校に迎えに行って1日を終えるという感じですね。

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ご飯ができました。
この『みとりおこわ』って宇佐から中津にかけてしかないんです。
今回の御飯は『紫飯(しはん)』といって、紫色の御飯なんですよね。
宇佐の方達は『赤飯』って言うんですが、正式には『紫飯』なんです。この辺では、仏事もこの御飯を使うんです。

神谷さんが、今のようなお仕事をされる前って、何をされててたんですか?

基本は、主婦でしたね。
大分大学を出て、その後日本女子大学に行って、幼稚園に勤めてました。
その後、幼稚園に勤めるのは向いてないと感じ始めて、辞めた後に、家庭教師をしたり色々していく中、結婚しました。
私の大学の時の卒論が「育児不安」だったんですが、その時代は『子育て支援』という言葉がまだ無い時代だったので、あまり認められるような分野じゃなかったんですね。
最終的に大学の先生にも認めてもらえなくて、それが悔しかったのがずっと心に残っていました

38歳までは京都、名古屋、横浜、厚木、福岡と、転勤を繰り返して、福岡に住みはじめた時に、たまたま福岡の中村学園大学が子育て支援をする人を募集しているのを新聞で見て、「大学院行かなきゃ!」と思って38歳で大学院に行ってました。

その当時、ご家庭はあったんですよね?大丈夫だったんですか?

そうですね。子供3人は幼稚園と小学生でした。
うちの夫も少し変わっていて、決心して「大学院に行きたい。」と言ったら、「行けば?」普通に言われて(笑)やりたいように、させてくれました。
それで大学院に行って、大学時代の先生を見返したい気持ちもあって、子育て支援を勉強して、子育てもしてました。
最近になって、その当時の恩師に褒められたんです。それで全ては報われました。

神谷さんって凄い勉強家なんですね。この建物や場所はどういう経緯で作られたんですか?

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ここ自体は母がやっているんですが、この場所で勉強会をしたり料理を研究したりするんです。いわば趣味の建物になっています。
「日常の食を見直そうと思ったら、非日常じゃないと見直せない。」というのが、母のコンセプトなんですよ。
今からお出しする御飯も家で食べたら、物足りない物になってしまうと思うんですが、ここで食べる事で不思議と、「採れたての新鮮なネギや椎茸がすごく美味しい。」と感動できるんですよ。それが見直す事に繋がるんです。

神谷さんが取り組まれていて、楽しい事って何ですか?

基本的に全部楽しいと思います。
人と会うとか、商品を作ったり、講演に行って高校生と話したり、元気な人に出会うなど、楽しいことが多いです。

人と人を繋いでいくのが仕事ですし、やっぱり私が発信しててワクワクする仕事をしようと思ったら、本当に自分が楽しくなくちゃおかしいんですよね。
私がアンテナで呼んでくる人達って、みんな同じような感度でアンテナが立っている人達だと思うんです。
そういう人達とお仕事出来ることは、本当に楽しいですね。

−−さて、ついに『hassh.in』初の御飯が出て来ました。いただきます!

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すごく美味しいですね。椎茸が入っているだけなのに、香りとお出しが染みわたります!これが神谷さんの言っていた非日常ですね。
御飯も炊き立てなのもあると思いますが、ふっくらですごく美味しいです。

そういうことなんです。だから料理のウデは全然上達しないんです。素材が美味しければ、それ以上何もする事がないからですね。
私に共通している考え方は、その物やその人の良さが出る事が一番だと思うんです。調味料にしても、人と会った時も、その方が本人自身もキツくもないだろうし、それがベストだと思っています。

−−高校生とのワークショップ

例えば、以前農業高校で講演をさせていただいたのですが、ワークショップができる機会があったので、「私は〇〇です」というワークショップをしました。
紙の半分に自分の長所、もう半分に自分の短所を書くように言ったんですね。すると高校生達の長所の部分がまったく書けてなかったんです。今時の高校生で「僕こんないいところがあって、自信があります!」って、胸を張って言える子って少ないと思うんですよね。
でも短所はいっぱい出てくるんです。
それを学校の先生にも見てもらうんです。ようは先生達もそこを把握していない方が多いからですね。別に勉強じゃなくても、「笑顔が良い。」とか「眼鏡がカッコイイ!」とかだけでもいいんですよ、自信を持つんだったら。
先生達も苦手なようだし、親はますますそういうこと、苦手だと思うんですよね。

−−ドレッシングと一緒で、味が足らなければ足せばいいんです。

私が『調味料マイスター』をやっていて楽しくなったのは、調味料っていうのは、『調和』とか『ハーモニー』とか『バランス』だと思うんですよね。
人間も調味料と一緒で、バランスを上手く取っていけばいいけど、どこでどうバランスを取っていいのかわからないんだと思います。
ドレッシングとかがいっぱい出るのは、自分がどう合わせていいのかわからないから、人が合わせた物を使いたくなるわけじゃないですか。
という事で、高校生に話をする際に、「隣の子に自分の良い所を聞いてみて?」と言うんです。そしたら色んな良い意見を出してもらって、その部分を自分の長所にしてしまえばいいんですよね。「笑顔が良い」と言われたら、『笑顔の可愛い〇〇ちゃん』になるわけじゃないですか?
それで自分の長所が持ち上がってくれば、短所ってわりと引き上がってくるんですよね。
短所がどうしても引き上がらない場合。
そういう時はドレッシングと一緒で、味が足らなければ足せばいいんです。
自分に欠けている所は、よそから持ってくればいいと思うんです。だから私も料理のセンスは悪くないと思ってますが、得意ではないです。だから料理人さんと組むわけなんです。
料理人さんも、生産者さんもそうなんですが、話下手だから私と組むとメリットが生まれてくるじゃないですか。しゃべりは上手くなくてもいいんです。「これに命をかけてる〇〇です。」でいいわけじゃないですか?しゃべりは私が担当すればいいんです。
そうする事で、バランスの取れたその人が浮き上がってくると思うんです。
それを繋いでいくのが私の仕事というか、役割だと思っています。

神谷さんの目標や夢はありますか?

正直に言うとないんです。「走られるだけ走ってみようかな?」という感じです。
目標って自分の枠を決めてしまうと思うんです。その枠は今の自分が勝手に想像した枠であって、もしかしたら自分の枠っていうのは、違う枠かもしれないと思うんです。
でも小さい目標とかはありますよ。去年とかだと、「年間に100回講座を実施しよう。」という目標を掲げて、『調味料マイスター』の知名度を上げたいと思ったから100回講座やりました。

100回は凄いです。全力疾走ですね。

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全力疾走なんだけど、丁寧に毎日を積み重ねていくしか、前には行かないという感じですね。マラソンですね。
例えば、物産フェアとかで出会った人に、嫌われるくらい辛口のコメントを言うんですけど、そこで「美味しいですね。」と言うのは求められてないと思っていて、それよりもどうしたらいいかを知りたいと思っているんです。
私はそういう時は素直に伝えようと思っています。素直にお互いに向き合うことが一番だと思っています。

そうやって人との出会いも一生懸命積み重ねていたら、見てくれている人は見てくれて、私が違う事をしていたら、ちゃんと「違う。」と言ってくれると思うんです。そんな人達の直球で物事の言い合えるネットワークを繋いでいきたいです。

最後に神谷さんの原動力を教えてください。

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好きな事をして、ワクワクして生きるという事が私のテーマです。
もちろん大人だから、嫌な事もしなきゃいけない事はわかっているんですけど、それをどうワクワクに変えられるかですね。ワクワクしない仕事を、ワクワクする誰かと一緒にやって変えてしまう。とか大事だと思います。
柚子も一生懸命になったのも、自分を見ている気がしたんです。
柚子って種も、青い実も使えるし、花も黄色い実も使えて、木も柱として使える。なのに知らないと、みんな皮だけしか使用方法がわからなかったりしますよね?

それと一緒で、みんなにも良い所がちゃんとあって引き出せるんです。自分の良い所が引き出せるってすごいワクワクする事じゃないですか?
それと『ワクワク』と『怖れ』って似ていて、どちらもプラスにもマイナスにもなると思うんです。だから、怖れを感じている時間って、すごく良い事なんです。
すばらしい人に会うとか、新しい事をやろうとする時に「上手くいくか?」と、不安などがあったりします。でも、その『怖れ』という物は、自分が出来るかどうか向かい合うから来る事であって、
『ワクワク』に変えてしまえば、自分はもっと成長できると思うんです。
『怖れ』は『ワクワク』の対局というか、チャンスなんだと私は思っています。

とてもいい言葉だと思います。「怖れはチャンス!」ですね。
神谷さん、実は前回のインタビューさせて頂いた小野寺さんから、質問がありますので、お答えください!

—Q.小野寺さん:「あまりにも忙しそうなんですが、影武者っていますか?」

—A.神谷さん:欲しいわ。本当に欲しいわ。(笑)質問が小野寺さんらしいですね〜。

というか、運転手さんが欲しいんですよね。(笑)
いつも行くガソリンスタンドのお兄さんに目をつけてるんですよ。
毎回「私が運転手さん付ける時は一番にお願いするからね。」と言ってる子が、どんどん出世してしまって、今のお兄ちゃんは5人目になってしまいましたが(笑)

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食のコーディネートのみならず、人や物産や産地までも、色んな物をくっつけて、みんなでワクワクする事をするのが大好きな、『食のコーディネーター』と『調味料マイスター』の顔を持つ神谷さんでした!

次のhassh.inは誰でしょう?

次回の「hassh.in」は、神谷さんが「良い」と感じる『商品パッケージ』をデザインされている方で、今も共に仕事をする仲の、デザイナーの綿貫さんです!

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生活工房 とうがらし

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