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#30 切り絵の可能性を世界へ。


プロフィール

氏名 工家企予人(Kuge KIYOTO )
職業 切り絵作家/フリーデザイナー
経歴 大分県中津市に生まれ、関西の専門学校を経て1973年にグラフィックデザイナーとなる。
1979年、郷里である中津市の印刷会社へ務める。
2004年から切り絵作家、フリーデザイナーとなる。
主な作品は鶴市祭切り絵/海上自衛隊掃海艇切り絵/中津祇園祭りおどり車十二車切り絵/金色温泉シリーズ/八面山シリーズ/国東シリーズ/他

工家さんはじめまして!本日はよろしくお願いします。
早速工家さんのhassh.inについてお聞きしてもよろしいですか?

 切り絵作家、フリーデザイナーとして現在大分県中津市の工房で作品を作っています。大分県内の様々な風景をモチーフにしたり、改築などで見ることの出来なくなる建物や結婚式の記念用などの依頼も多いですね。依頼の場合はネットでの注文なので大分県内に留まらず県外のお客様も大勢います。以前は沖縄県の最西端、与那国島のお客様もいらっしゃいました。モチーフは人物や風景、建物の他にも植物や動物などなんでも請け負っています。やはり記念的なものとして注文される方が多いので、私自身も面白いお話が聞けたりして楽しいですね。

お部屋にずらっと並べていただきました!!色鮮やかでとても綺麗です。
切り絵を始めるきっかけは何だったのでしょうか?

 切り絵そのものを始めたのは14〜5年ぐらい前からです。それまでは関西で宣伝関係のデザインを仕事としていました。でも心身ともにきつくなって故郷の大分県に帰ってきたんです。それから大分県の印刷会社に勤めていたんですが、仕事の関係で会っていたスーパーマーケットの専務から「お祭りの絵を描いて欲しい」って依頼があったんです。この方、中津市で開かれる鶴市花傘鉾祭花火大会というお祭りの責任者だったんです。絵を元にこのお祭りの寄付金を集めて地域を盛り上げたい、ということだったんですね。そこで引き受けたんですが、普通の絵じゃ面白くないなと考えていたら、たまたま見ていた本に東北のお祭りを切り絵にしたものが掲載されていたんです。「これは日本的で雰囲気も良いし、ひょっとしたら面白いかもしれん」って考えて、それから図書館に行って切り絵とはどうしたら作れるのか調べましたよ(笑)結果、自分の作った切り絵をポストカードにして寄付金のお礼として皆さんに渡すようにしたら、これまでの倍人々が集まったんです。これが人生最初の切り絵作品ですね。地域の活性化に貢献できたんじゃないかなと思うと嬉しいです。

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これは確かに欲しくなります!!声が聞こえてきそう!!
今現在は印刷会社を辞められてご自宅で活動されていますが、どういった経緯から作家活動を始められたのでしょうか。

 私が52歳の時、印刷会社を辞めて独立しました。それからはフリーのデザイナーとして働きながら一年に1つぐらいのペースで切り絵作品を制作していました。ある日、私の作品を知り合いの陶芸家の方が見て東京の上野美術館で行われる全国公募に誘っていただいたんです。そこで公募展に出したら新人賞をいただくことになって、立て続けにもう一つ賞をもらったりしました。そこで「あ、切り絵でやっていくのもいいな」って考えたんですね。それから本格的に作家活動を始めましたね。まずは生まれ育った中津市の風景シリーズ。切り絵をポストカードにして中津城や観光案内所などに置いてもらいました。最近はデジカメですぐに写真が撮れるから、切り絵のポストカードは評判が良かったんです。それから耶馬溪シリーズや国東シリーズを作ったりしているうちに、いつの間にか大分県中周っていて臼杵や由布院の作品も増えました。ネットでの展開も行うことによって依頼作品も同時に増えていきましたね。そうやって気付いたら300点近く作品を作っていました。

300点も作られているんですね!!
現在フリーデザイナーとしても活動されていますが、やはり切り絵に通じるものがあるのでしょうか。

 自分はもともとデザイナーから始めた人間で、どうせ作るなら「好まれる作品」じゃないとお金にならないっていう考えがありますね。少し言い方が汚いかもしれないけど一番肝心な所だと思います。趣味の自己満足な世界じゃなくて、お客様の要望を聞いてそれを形にするっていうデザインのやり方で切り絵作品も作っています。

工家さんが活動されるうえでの原動力とはなんでしょうか?

 原動力か…。今作品を作っている事自体が楽しいんじゃないかな?依頼してくれた方が喜んだり楽しんでもらえると思うと自然に「良いものを作ろう」という前向きな気持ちになるし、お客様の要望に答えられると収入にも繋がる。会社勤めの時に比べてストレスも減ったし、胃潰瘍や十二指腸潰瘍になるまで働いていた頃に比べたら今じゃ風邪も引かない。これらが全て良い原動力になっているんだと思います。かなり自由にやってるけどそれで生活できるっていうのはすごく幸せなことだとですね。

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工家さんにとってこれからの夢や目標はありますか?

 去年アメリカのロサンゼルスで個展をしたんですが、その関係でニューヨークでの個展の予定が入ったんです。その個展で取り組みたいのが目の不自由な方への切り絵の有効活用です。以前中津市の社会福祉協議会でのお祭りで、自分の展示作品を指で触れていた目の不自由な方が、紙の重なった凹凸部分を通して物の形を楽しんでくださったんです。それで会議を経て「自分の顔の形を知りたい」という意見を聞き、ボランティアとして皆さんの似顔絵を切り絵で制作しました。その作品を最後はご本人にプレゼントさせていただいたんです。この取り組みが福祉に力を入れているアメリカでも取り上げられてニューヨークでの個展が決まりました。この個展は来年以降になると思いますがその後はヨーロッパでも展開していきたいと思っています。

言葉が通じなくても触感は皆同じですからね!!
作家やデザインをされている方に伝えたいことなどありますか?

 今の若い人は割と自由にやりたいことが出来ているっていう印象があります。別府や国東のアートイベントとかね、若い作家さんが集まっていろんな事をしているじゃないですか。時代や年代の差があるから我々の歳では考えつかない面白いことが出来ているなって思います。若いうちは頭も柔らかくて色んな発想が出来るからどんどん考えて、新しいものに取り組んでもらいたいですね。

では、最後に是永さんから質問を頂いているのでお答えください。
—Q.是永さん:「どうやったら色彩のセンス、配置のセンスを磨くことが出来ますか?」             

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—A.工家さん:「最近周りに『工家さんの目って他の人と違ってデジタルだよね』って言われたんですよ。だから自分の目は色分析が出来るんじゃないかな。自分でも気付かなかったけど、誰しも持っている特技の1つなんだと思います。だから切り絵の時に色や配置を決めることが出来るんじゃないかな。」

大分の様々な魅力を、切り絵によって空気感まで再現してしまうということに大変驚きました!!
切り絵の更なる可能性と工家さんの大きな挑戦にこれからが楽しみです。
工家さん、ありがとうございました!!

hassh.inは今回を持ちまして一時休止させていただきます。
これまで取材させていただいた皆様、ご覧になってくださった皆様、本当にありがとうございました!!
これからも大分県でhassh.inしていく人々、hassh.inに向かって頑張っている人々を応援しています!!

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切り絵工房 工家

住所 〒871-0152
大分県中津市大字加来2283-63
Tel/Fax 0979-32-6351
Mail kuge@kirie-kuge.com
Web 切り絵工房 工家

10月の展示会
秋の創業感謝祭(秋の特選美術展)
日時:2015年10月2日(金)〜2015年10月3日(土)
開催場所: ホテルアルモニーサンク

住所:北九州市小倉北区大手町12-3 2階
電話番号:093-592-5401