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#9 無垢の心で 一つの道に徹する


プロフィール

氏名 木原 寿彦(toshihiko kihara)
職業 エネフォレスト株式会社 専務取締役
1983年生まれ。大分県出身
2005年 北九州市立大学 経済学部を卒業し、セブン-イレブン・ジャパンに入社。
2008年 セブン-イレブン・ジャパン退社後、シールドテック株式会社(現エネフォレスト株式会社)へ入社。
現在は、エネフォレスト株式会社のシールドテック事業部とエネルギー事業部を統括する専務取締役として、地元大分の環境や自然をテーマに、数多くの事業に注力している。

本日はよろしくお願いします。会社の中が、木材のいい香りがしますね。

ありがとうございます。実はこのオフィス、私の趣向を設計に取り入れて頂いたんです。
弊社は平成18年に空気殺菌装置『エアロシールド』のメーカーとして設立されました。当初は『エアロシールド』の開発・販売のみおこなっていました。これが現シールドテック事業部のはじまりです。
また、弊社の社長(実父)は元々、電気工事会社も経営していまして、再生可能エネルギー関連の電気工事も手掛けていたのですが、営業から施工まで全て対応できるような体制をつくりたいと考えまして。
そこで営業・コンサルタントの部門として、エネルギー事業部を発足させたんです。
そんな流れで、今のエネフォレストがあります。

では、まず木原さんの今までの経験を教えてもらっても宜しいですか?

大学を卒業してから、セブン-イレブン・ジャパンで3年間、経営相談員の仕事をしていました。
将来は経営者になりたいと思って入社したので、経営の勉強もできる恵まれた環境でした。
転職のキッカケは今の会社です。社長(実父)が空気殺菌装置のメーカーとして新会社(現エネフォレスト)を立ち上げたんです。「この空気殺菌装置は誰かが普及させないといけない」という使命感を感じました。それで、それまでの仕事も充実していたのですが、創業間もない新会社に転職することを決めたんです。職場の同僚や人事部長から「やめておいた方がいい。」と言われ、気にかけてくれていた上司からは「この先があるのに、なぜ?」と言われ・・。たくさんの方が私を心配してくれました。
でも自分の中で心は決まっていましたので、「もう、やるしかない!」と、一歩踏み出しました。

 そこから空気殺菌装置『エアロシールド』の開発・販売や会社の経営に携わってきました。既に空気清浄機が社会に普及していたので、当時国内で誰も知らない空気殺菌装置をゼロから開発して、認知度を広げていくのは簡単な事ではありませんでした。しかし自社の製品に自信を持っていましたし、何よりたくさんの方の支えもありまして、現在では医療業界にもかなり認知度が広まってきています。

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市販の空気清浄機って、空気をキレイにするイメージがあるので、菌もなくなっているイメージがありますよね。病院にも置いていたりしますから。

空気清浄機の殺菌効果については弊社で実験をしておりませんが、日本環境感染学会の発表論文(日本環境感染学会誌Vol27,No25,2012)の中に、「ほとんど殺菌効果が認められなかった」という研究結果が掲載されています。ご質問に対してはこの論文が参考になるかと思います。
日本は欧米諸国と比べて、特に空気感染対策の知識が広まっていないのが現状です。
私自身、「今のこの仕事をしてなかったら、知らないことや気が付かないことがたくさんあるんだな」と、思ってて・・。
そうして、世の中の常識が必ずしも正しいわけではないということに気付いたんです。「今の常識で苦しんだり悲しんでいる人が、実はたくさんいるんじゃないか?」って。だから常識にとらわれない客観的な視点で、世の中に価値ある提案をしていきたいと思っています。

なるほど。確かに無知な事って怖くなってきますね。その画期的な商品について、教えてもらっていいですか?

弊社の『エアロシールド』は空気中の菌やウイルスを殺菌するのが目的です。紫外線を利用する殺菌方法を『UVGI(UVGIとはUltra Violet Germicidal Irradiationの略で、「紫外線照射による殺菌」を意味します)』と呼ぶのですが、通常の菌やウイルスは10秒もあれば殺菌でき、カビは6分ぐらいで死滅させる事ができます。『UVGI』は殺菌に最適で、日本では東京大学をはじめ、世界中で研究されています。そして弊社が何よりもこだわっているのが「実際の生活環境で効果があるのか?」という点です。試験用の小さなボックスではなく、実際に人が生活する広さの空間での殺菌効果を追求していて、実際に第三者研究機関にもその実用性を認められています。
『エアロシールド』は2.1m以上の壁や天井に取り付けて、天井付近に紫外線の層を作ります。
そこを通った空気が殺菌されるんですが、人の居る高さには紫外線が当たらないため安全です。
紫外線と聞くと人体への悪影響をイメージする方が多いのですが、人のいる空間でも使用できるのが『エアロシールド』です。

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その装置は実際にはどういったところで、利用されてるんですか?

病院・調剤薬局・高齢者施設・保育園・ホテルの厨房やレストラン、ロビー・給食センター・お菓子メーカーの工場・公共施設、後は一般企業等ですね。
導入して頂いた後は、殺菌効果を実証するためのデータを取らせてもらっているのですが、そうすると効果は一目瞭然なんです。データを取って殺菌効果の実証をし、お客様に納得をして頂く。お客様に満足頂けるようサービスを徹底しています。

実際に実証済みなんですね。

それに加え、『エアロシールド』には学術的根拠があります。
医療業界には『CDCガイドライン』という国際ガイドラインがあって、それが医療機関の基準になっているんですが、その中で空気感染対策の空気殺菌手段として唯一掲載されているのが『UVGI』なんです。そして『エアロシールド』は、国内のUVGI適合製品として『CDCガイドライン』の和訳版に掲載されています。

−−日本と海外の認識の違い。

アメリカではこのUVGI方式が空気感染対策のスタンダードです。
『感染』や『予防医学』が発展していて、学術的な根拠を重視するんですね。以前アメリカの学会に参加して現地を視察したことがあるのですが、空気感染対策に非常に力を入れているのが伝わってきました。
日本はアメリカと比べて、空気感染に対する認識が広まっていないように感じます。たくさんの施設の方とこれまでお話をしてきましたが、「菌やウイルスは目に見えないからどう対策すればいいかわからない」、「これまで何(施設内集団感染)も起きていないから対策しなくてもいい」といった声が多いのが現実です。しかし身の回りの空気に菌やウイルスは大量に浮遊していますし、それを常に吸っているわけですから、私たちの生活は常に空気感染の危険と隣り合わせです。この認識が、まだ国内では広まっていないと感じます。

−−様々な人達・企業との連携

大分大学と共同研究と言いますか、当社で集めたデータ等をお渡しして、殺菌効果を検証して頂いています。
先ほどお客様の施設でデータをお出しする事が出来るというお話をしましたが、それは『株式会社ビー・エム・エル』という大手検査会社との業務提携によるものなんです。
製品開発当初、『エアロシールド』の性能試験をこの『株式会社ビー・エム・エル』に依頼したのですが、その時に「室内の浮遊菌が89.6%減少」という結果が出まして、性能を認めて頂くと言う形で業務提携に至りました。
また、東京の『空気清浄協会』という室内環境や空気清浄の大きな協会があって、論文編集委員長を務めていらっしゃる大学の先生から空気殺菌をテーマにした論文の執筆依頼を頂いたんです。
「やっとここまで来た。」というのが、今まで5年間やってきて思うところですね。

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大学の先生から論文の執筆依頼って凄いですね!その苦労は並大抵ではなかったと思うんですけど・・・。

全てのはじまりは今の会社への転職ですが、「誰かがやらなければならない」という使命感を持ちながらこれまでこの仕事に取り組んできました。途中、何度も壁に当たりましたが、諦めずに進んできたことが現在に繋がっていると思います。
これからもたくさんの困難があると思いますが、前を向いて進み続けたいと思っています。

もう一つのエネルギー事業部って、主に何をされてるんですか?

現在は主に小水力発電事業と地熱発電事業です。
地熱発電は、エネフォレストと、東京の温泉井戸掘削に実績のある大手企業と共同出資して設立した『大分地熱開発株式会社』で主に事業を展開しています。
実は、固定価格買取制度が成立して以来、民間企業の地熱発電は前例がないんですよ。
住民の反対運動や技術的な課題、資金など、いろんな理由で頓挫してしまうことが多いんです。
しかし『大分地熱開発株式会社』は繰り返し説明会を重ね、地元の皆様にご理解を頂く事ができました。技術面は弊社の発電所建設のノウハウと共同出資企業の温泉掘削技術でクリアできます。県の掘削許可もおりていて、もうすぐ着工予定です。誰も知らない未知の領域に足を踏み入れていくということで、とてもワクワクしますね。

奮闘されてますね!民間が地熱発電に参入できるなんて知らなかったです!

簡単にはじめられるものでないのは事実です。でも、地熱発電に限りませんが、『不可能な事』って、ないと思うんです。実際、地熱発電事業を立ち上げる際も周囲にはいろんな声がありました。「資金や技術的なハードルが高すぎる」とか、「過去に前例がない」とか。『できない理由』ならいくらでも出てきます。でもはじめからそんな心構えだと何もできませんし、何もはじまりません。何をするにしても、『できる理由』を探すことが大切だと思うんです。

何故、そんな大規模なエネルギー事業をしようと思ったんですか?

小水力発電事業に関してもそうですが、私たちは決して利益を出すためだけの目的で事業を進めている訳ではないんです。
例えば、いま農業従事者が減っていますよね?それにはいろんな理由があるんですけど、ひとつは農業に使う水路の維持・管理費用です。水路は、ただ水を流すだけではなく、補修や清掃に費用が必要です。そこで、近辺で農業される方々は組合を作り、お金を出し合って農業用水路を管理されています。しかし農業従事者が少なくなっても、管理にかかる金額は変わりません。
すると一人あたりの負担が増えて、どんどん農業をやりづらい環境になります。それが若者の農業離れにも繋がるという悪循環に陥っているんです。
「この状況を改善しないといけない」と、思ったのがキッカケです。農業地域に発電所を造ってその売電収入を水路の維持管理に充てれば、農業もやりやすい環境になる。余剰のお金が出れば、その地区のブランド農産物づくりにお金を充てることもできるかもしれない。とにかく、地域の皆様の力になりたいんです。
「技術で世の中を変えたい」とは思っていません。というより、「人が困っているところで自分にできることがあるのではないか。良い方向へ変えられるお手伝いをしたい。」という想いが強いんです。この想いがエネルギー事業部の原動力ですね。

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地熱発電の理由。

地熱発電も同じ想いで事業に取組んでいます。
大分県は温泉資源に恵まれていますよね?その特色を最大限に活かして地域の活性化に繋げたい。「大分に居る以上、地元大分を良くしていきたい。」という気持ちが凄くあるんですよ。そこで、地域の組合の皆様に「地域と一体となって地熱発電事業をおこない、地域の活性化に繋げましょう!」という提案を積極的にしていきたいと考えています。地熱発電は、地域への様々な還元方法があります。発電した後の熱を椎茸の乾燥に利用したり、足湯を作ったり、エネルギーを無駄なく有効に使用する事ができます。ビニールハウスの暖房に使用して、ボイラーの維持コストが浮くだけでも、地域の皆様の負担を軽くできると思うんです。
とにかく『地域のために』という、その想いに尽きます。

今の取り組みの中で、楽しい事ってありますか?

全てが楽しいです。
でも今のこの気持ちになるまでに、実は結構時間が掛かってるんですよ。
例えば、資金繰りなどすごく苦労しました。「もう無理かもしれない。」と思う事が何度もあって、マイナスの方向に気持ちが傾く事もありました。仕事の楽しみを見いだせなくて、正直「自分の決めた道が間違いだったかな?」と思う事もありました。
今振り返ると、その時はまだ心のどこかで、自分の未熟さや、置かれている境遇を他人のせいにしていたんだと思います。
そんな自分に気が付いて、「それじゃダメだ。今の道を決めたのは自分じゃないか。」と、自分が本気で覚悟を決めた時があったんです。
それからは完全に「自分で全部、責任を取ろう」と、自分自身が変わることができ、いろんな方に出会えるようになったのかなと思います。
売り上げに繋がる・繋がらないで人や仕事を選ぶのではなく、全てを素直に受容れる。その中でいろんな方の話が支えになり、今の自分の楽しさに繋がっていると思います。
素直に全てを受容れると、自然と周囲の方が私に声をかけてくれるんです。困り事の相談だったり、新しい仕事の依頼だったりするんですけど、それがまた新たな出会いを生むんですね。
苦しい時期は確かにありました。でもこの期間がなかったら今の自分はないし、成長もなかったと思います。今のようにいろんな方に出会って、楽しく仕事ができるのも、自分が決めた道を諦めずに歩み続けて来たからだと感じています。
そして、周囲の人への感謝の気持ちですね。この会社を立ち上げた社長の想い、いつも指導してくださる先輩方、自分の境遇全てに心から感謝しています。
これからも、この感謝の気持ちを忘れずにいたいと思います。

私は自分で営業して当然のように結果を出さないといけない状況だったので、自分自身で大きい仕事をとっても、そんなに嬉しくはありません。でも自分以外の社員や新卒の社員が、「やっと契約取れた!」とか、そういうのは凄く嬉しいんですよね!
私自身、やりたい事が沢山あるので、会社はできる社員に任せたいと社員には伝えています。
そういった意味で人材育成というものの楽しみも発見しています。

木原さんの目標や夢を教えてもらえますか?

私が最終的に目指してるのは、ベンチャー企業を育てるような会社です。
今のこの世の中で会社を立ち上げたり、事業を新しく起こすのは簡単なことではありません。私自身、明日の見えない暗闇の中で、これからどうすればいいのかわからない、一歩前に進むことすらできないという経験をしてきました。今も困難の連続ですが、過去の経験から伝えられること、できることがあると思うんです。『うまくいかない時でも諦めずにやり続ければ必ず道は拓ける』ということを、過去の自分の経験や、先輩から学びましたし、今度はそれを誰かに伝えたいという気持ちです。私もまだまだ発展途上で勉強することばかりですが、熱意に満ち溢れた人や、この人だったら何かやってくれる!という人を、どんどん応援できる企業になりたいです。
そんなアツい人達が集まって、皆で切磋琢磨出来て、大分を盛り上げられたら最高だと思います。

木原さんの原動力は何でしょう?

私は性格上、困っている人を見たら放ってはおけないんです。だから少しでも困っている人の力になりたいといつも思っています。これが私の中の『核』ですね。
そして『私自身の大きな夢を叶えたい』、という気持ちです。「夢だけで食べていけるのか」ということも言われますが、私は逆に「夢さえ見られずに、食べていくことなんてできない」と思うんです。私の夢を、自分ひとりで達成できるとは思っていません。私はまだまだ発展途上で、知らない事、できない事がたくさんあります。だから先輩方や周囲の皆さんからいろんな事を学んで、夢を叶えられる自分になりたい。そして自分が夢を叶えることで、困っている人の役に立ちたい。
夢を叶えた自分を心に描きながら、これからも毎日を全力で駆け抜けたいですね!

木原さん、お待たせしました!
前回のインタビューさせて頂いた井尾さんから、質問がありますので、お答えください!

—Q.井尾さん:「いつご結婚されますか?」

A.木原さん:マジで勘弁してほしい〜(笑)
いやぁ、コレばっかりは未定ですもんねぇ~・・・。解りました!じゃあ、宣言しましょう。2年以内で!

かなりリアルな数字ですね。この達成出来るか出来ないかの数字が。(笑)

A.木原さん:私、言ったからにはやりますよ!

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では、2年後が楽しみですね!これからも期待しています!
自社製品と大分のエネルギーで、いろんな人が有意義に生活していける事をアツく目指し、これからも面白い事をどんどんしていきそうな、木原さんでした!

次のhassh.inは誰でしょう?

次回の「hassh.in」は、経営を教える盛和塾で知り合い、今でもお酒を酌み交わしながら、経営についてアツく語り合う、小野寺さんです!

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