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#19 地域を”その気”にさせる(後方支援をする)


プロフィール

氏名 姫野 由香(Yuka HIMENO)
職業 大分大学工学部助教
経歴 1975年大分生まれ。博士(工学)。大分大学工学部福祉環境工学科建築コース助教。
大分大学大学院工学研究科建設工学専攻を修了後、大分大学工学部建設工学科助手を経て、2008年より現職。専門は建築・都市計画(景観まちづくり・市街地再生)
現在、主に文化的景観維持における住民参画に関する研究や、中心市街地から離島や中山間地域まで、エリアマネジメントの視点から地域運営の持続可能性に関して研究。

2004年から2009年度まで、科学研究費によって「観光資源の戦略的整備のための景観解析・整備システム開発」、「景観解析手法を反映した湯けむり景観の実践的整備指針導出システムの構築」等、主に別府市をフィールドとした研究を行ってきた。
2010年度以降は、国土政策研究支援事業(国土交通省)に採択され「規模・基盤・産業・行政施策の経年変化にみる離島の構造特性と類型化-地方における自立的地域運営・経営に関する研究-」を実施。現在は、科学研究費「景観まちづくり活動の持続可能性とその要因分析」や「流動的居住に着目した集住地を継承する主体の養成に関する研究」など研究活動は全国に広がる。著書に「住民主体の都市計画」(共著:学芸出版社)、「地域資源を活かした市民活動とまちづくり」(共著:櫂歌書房)ほか。

姫野さんはじめまして!本日はよろしくお願いします。
早速ですが、姫野さんの『hassh.in』を教えていただけますか?

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大学にいますので一番大事なのは教育・研究です。私の専門は都市計画でマネジメントです。
例えばある地域を観察した時に、一生懸命地域を活性させようとしているんですけど、なかなか元気が出ない地域があった場合、何がウィークポイントなのかというのを診断して「そこはこういうことを補った方が良いんじゃないか?」というサポートをさせて頂いています。
なぜウィークポイントだと判断できるのかは、私達研究者が、書籍だけでなく、全国のいろんな活動の状況や結果を知っていてこそサポート出来る訳です(常に努力が必要です…)。
しかし私達はプレイヤーではないので、そういう助言や情報提供は出来るのですが、実際に頑張る事が出来るのは地域の皆さんなんです。地域を元気にできるのも地域の皆さんでしかないんです。

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ご相談に来られる時点で皆さん一生懸命なので、サポートのしがいがありますね。研究から派生して現場をお手伝いすることもありますし、逆に押しかけて研究していることもあるんです。なので大学外に出ることもすごく多いです。
研究するということは、地域に還元する為に自分が情報を常に更新して得ないといけないですから、学会活動や調査も絶対かかせなくて、月に1度東京やいろんな所に行きます。現場にも出ているので、正直時間が足りないくらいです。

目の前に与えられてリクエストされたことに、一生懸命応えようとすることでいっぱいいっぱいなので、これが自分の「発信」している事かどうかわからないですが、だだひたすら走っていますね。

姫野さんは生まれ育った大分を、どんな風に想っていますか?

大分を健康体にしたいという感覚なのですが、私ずっと「厚化粧が景観づくりじゃない。」と考えていて、「素肌美人にならなくてはダメだ!」と思っているんです。
地域には良い栄養=活力や誇りが必要じゃないですか?

景観と同様に、食も同じ。地域の素材を活かして、地域の技術で作ったものが美味しいじゃないですか?そういうことを大事にするまちづくりをしたいです。それは大分に魅力があると信じているからこそ、大事にしないといけないと思うんです。

四方を国立公園で囲まれていて、中には国宝クラスの文化財が複数ありますし、文化的景観も一県で3箇所もあります。各地がすごく個性的ですし、いろんな多様性があり文化もあって、地形情景も非常に豊かで海と山があって、人口構成比のバランスや、高齢化や、二次産業についてのバランスも「 日本の縮図だね!」と、よく転勤族の方に言われる位なんですよ。
それ位ポテンシャル・多様性がある地域ですし、私自身が「大分にはたくさん魅力がある!」と信じているからこそ、ずっと元気でいてほしいですね。

大分にはそんな魅力がたくさんあったんですね!知らないことも知れて勉強になります。
「hassh.in」している中で、取り組まれているエピソードを教えてもらえますか?

取り組みとしては、主に”特定地域「場」の再生”なので、例えば一番長いものだと、12年近く別府の鉄輪と明礬温泉地域の景観ガイドラインの策定とか、住民参加型で地域の皆さんが取り組まれてきた活動を、景観をつくる活動に、制度に転化したりしています。
一昨年度ですが「あなたの積んだ石垣が別府の文化的景観になります。」という取り組みを、地域の方と一緒に行ないました。

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実は別府の明礬と鉄輪の”景観”は、約2年前に『重要文化的景観』といって、『重要文化財』と同じクラスで、国から国民の財産である景観として認定されたんです。
それは何が認定されたかというと、見た目が美しい等だけではなく、皆さんの生活だったり商いをされていたり、そういった生活が景観にちゃんと表れていて、その表れ方が昔から脈々と受け継がれてきたことを指しているんです。
例えば、”湯治の文化”がまだありますし、その湯治宿さんの壁面や湯けむりの景観、”別府石”を使った石垣等もそうなんです。 
言ってしまえば、コンクリートブロックでも造れる訳じゃないですか?そこを地域の素材を使って、地域の技術で積んでいる、そんなことが国から評価されている訳なんですよね。

これは心の広い地権者の方がいてからこそなんです。
本当はプロの方に頼む所を、学生やお子様が来て作業をさせて頂けたわけなので。
でもそうではなく、「”地域の皆で積む”ということが大事だし、それをみんなに伝えて派生させる為、楽しめるイベントにすることに意義があると思う。」と言って頂けたんです。
「担い手も減っているから、技術者の人に習いながら皆で積もう!」というワークショップを実施するのも私達の活動の一環なんです。

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私達の専門の分野は、地域にご協力して頂かないと教育も研究も出来ないという実情があって、研究や調査の時は本当に地域の皆さんにはお世話になっているんです。
どちらかというと皆さんに還元するよりも、皆さんに与えて貰うことの方が多いです。
だからこそ得られた研究成果は、必ず地域に還元できる様に努力しますし、国の機関や学会発表等で、皆さんに認めて貰えられるものにするのが、私達の責任であり仕事だと感じています。
それが恩返しになるかわからないですが、少しでも地域の為になることをし続けて、感謝の気持ちを伝えたいと思います。

地域の方との関係が深まりますね!『hassh.in』する中で楽しいことを教えてもらえますか?

他県の研究者やお客さんが来ると、すごい嬉しいですね。
大分の活動を知ってもらい、取り組みにビックリされるんですが、私は自慢大会をしているつもりなんです。どこに連れて行っても「これ、いいでしょ!」みたいな。(笑)
「学会で視察のプログラムを組んで欲しい。」と、頼まれるのも大変なんですが、「すごい。いいよね!」とか言ってもらえるとすごく嬉しいですし、楽しいですね。

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それと私と打ち合わせする人達には、帰っていく瞬間に、笑顔で「頑張ります!」って帰ってくださるとすごい嬉しいですね。
皆さんにはもっと自信を持ってほしい。反対とかが続くと自信なくなっちゃうじゃないですか?でも、自分がやろうとしている事って信じたいじゃないですか?信じれると本当にやる気になるし、前に進めると思うんです。
行政も民間もですが、私達はそのお手伝いをさせてもらっているんです。自分達がやろうとしていることがきっと地域の為になると信じてもらえる様に、他の地域の情報等が背中を押せる材料になるよう様に提供することで、力になりたいです。

大分の良い所って自慢したくなりますよね。姫野さんの目標や夢を教えてもらえますか?

ちょっと前までは『カフェ』をする事が目標だったんですけど、断念しちゃったんです。(笑)まちづくりをしていると、「結局、人が大事。」とよく言われるんですが、その人達が問題意識を常に誰かと話せて共有できたり、アドバイスをもらえたり、そういう中で気持ちが固まって、「よしやるぞ!」って気になったり、仲間を見つけたり出来る物理的な場所が必要だと思ったんですよね。それが『カフェ』だと私は思ったんです。
独立してコンサルタントしている友人や、同じ分野の研究者も含め何人かと話しをしていたら、みんな最終的に「カフェをしたい。」って言うんですよね。
なぜ断念したかというと、カフェの経営者さんってすごいですよね。
自分と合わないお客さんも来る訳じゃないですか?
そんなお客さんも変わらず対応することがすごいと思って、私にはそのスキルはないと思って断念したんです。(笑)

では、今は探している途中なんですね。

目標はなんだろう・・・。
『諸葛孔明』のような人と出会う事とかですかね?(笑)
こんな事言って、また嫁に行けなくなるんだろうな~(笑)

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三国志でも有名な策士『諸葛孔明』ですね!最後にハードな毎日を支えてくれる、姫野さんの原動力を教えていただけますか?

原動力は地域がやる気になった瞬間に「わたしも頑張ろう!」って気持ちになることですね。
仕事はハードで時間も取られるし、出張も過酷なんですが、やっぱり現場に出て困った方々とやりとりしている中で、彼らが「それいいね!それやろう!」と、彼ら自身が何か新しい取り組みを発見して、地域で何かをすることを楽しみ始めた瞬間や、具現化した時に「だから(私も)頑張れるんだ。」と思った瞬間が多々あります。

自分が少しでも力になれた時は嬉しいですし、疲れなんて感じなくなりますよね!
では、そんな姫野さんにお聞きします。実は前回取材させて頂いた光浦さんから質問を預かっていますので、お答えください!

—Q.光浦さん:「本当はどんな男性がタイプなんですか?」

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—A.姫野さん:「打たれ強い人がタイプです。聞いたからには、責任もって探してきてください!(笑)」

主に特定地域の再生に力を入れ、専門分野で地域に情報を提供しながら、地域の方をサポート!まちづくりをやる気にさせ、「大分の魅力を信じているからこそ素晴らしい部分を自慢したい!」とアツく語って下さった姫野さんでした!

次のhassh.inは誰でしょう?

次回の『hassh.in』は、姫野さんが杵築でのまちづくりを考える中で出会った、杵築の老舗『お茶処 とまや』の今村 佐和さんです!

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大分大学 工学部

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